今日は勝海舟の交渉術について、書かせて頂きます。
勝海舟と言えば、江戸城の無血開城を西郷隆盛と交渉して実現した人物として有名ですね。
ところで、皆さん、彼が交渉を始める前に必ずする、ある行為のことをご存知でしょうか?
これは彼の自叙伝である氷川清話にも他の本にも書かれています。
勝は交渉の依頼を受けた時、それを受ける前に必ずこう言うのです。
私がこの交渉事を受ける前に、一つ約束して下さい。私に交渉の全権をお与え下さい。そして、交渉が始まった後、途中で口出しはしないで下さい。その代わり私は交渉の結果の最終責任をとります。この条件をのんで頂けないならお断りします。
現代の政治家でも、ビジネスマンでもこんなことを明確に言える方はいるでしょうか?
多くの場合、こんな大胆なことを言えず、交渉が始まった後、後からいろいろ指示が上司や関係部門から出てきて、場合によっては背中に味方から矢が飛んできて、前に進めなくなり、板挟みとなり、身動きできなくなったケースを私はたくさん見てきました。
私も勝先生(私にとってはMentorですのでここではそう呼ばせて頂きます)の様に、交渉事を始める前に、『私を信用して、私に一任下さい。全責任は取りますから、交渉の途中で口出しはしないで下さい。この条件を受けて頂けるなら、お受けいたします』こんなカッコいいことを言ってみたいといつも思います。
しかし、こんな言い方、私はとてもできませんし、こんなことを言える方も、実際に言っている方も現代ではあまり聞きませんね。
当時、勝海舟がこれを出来たのは、実績と自信、そして絶大なる信頼を皆から勝ち得ていたからだと思います。
西郷隆盛との江戸開城交渉でも、勝海舟はこの条件を幕府に飲ませてから交渉に臨みました。
当時、幕府にはまだ軍艦もありましたし、徹底交戦派もいた訳ですから、それらの意見を全て聞いていたら前には進みません。
他の人間が交渉を担当していたら、幕府の複数の人間の意見を調整しながら前に進んでいたら、西郷隆盛は江戸へ攻め込んでいたのではないでしょうか。
Part 4では勝海舟の言葉について書かせて頂きます。