英語の話から脱線します。約30年前の1989年にベルリンの壁は崩壊し、資本主義は社会主義に勝利しました。しかしながら何故、中国は社会主義の国なのにここまで急速な経済発展をしてきたのでしょうか?
これは私が疑問に思っていたことでした。今日はいろいろ調べた結果、私が考えたことを書くことにします。
きっかけは最近のアメリカのコロナウイルスに関する中国責任論の広がりでした。
アメリカだけでなく、フランス、オーストラリアも中国に対してコロナウイルスの発生源の調査を要請して、中国はそれに全て反発しています。
世界No.2のGDPとなった中国はメディアも巻き込んで、お互い宣伝合戦となっていますが、中国は何故、こんなに一貫して強気なんでしょうか?
結論から先に言いますと中国は積極的に外資を取り入れて経済では既に資本主義国以上に資本主義国家になっており、200年前の栄光の時代を取り戻そうとしています。
皆さん、既にご存知のことかもしれませんが、まずは歴史から整理します。
中国は現在でも政治は社会主義の国ですが、1978年に経済は計画経済から改革開放路線へ変更しました。
そもそも社会主義の考え方と矛盾する格差を認めて一部の人間が先に豊かになることを認める”先富論”を推進しています。
そして経済については個人の自由を認め起業も推奨しています。
その後、中国のGDPは急激に成長、2006年にイギリス、2008年にドイツ、2010年には日本を追い抜き、世界第2位となりました。
1人当たりのGDPはまだ世界70位前後ではありますが、GDP総額では数年後にはアメリカを抜き世界No.1になると言われていました。
コロナで今後、どうなるかはわかりませんが、ここまでも世界のサプライチェーンに組み込ませた中国をすぐに他に切り替えるのは難しいかもしれません。
何故、社会主義市場経済という特殊な体制の国が、資本主義の先輩であるイギリス、ドイツ、日本をこんなに短期間の間に抜いてしまったのでしょうか?
そもそも資本主義にはお金が必要で、それがなくして急激な経済成長は不可能です。
改革開放路線の中で、一人っ子政策などもありましたが、いろいろ調べた結果、私は積極的な外資の導入が一番大きな成長の要因と考えるに至りました。
現在、世界のパソコンの90%以上は中国製で、意外かもしれませんが中国は自動車生産台数でも世界一です。
中国が世界最大の自動車生産国と言われてもピンとこない方もいると思います。
パソコンの場合は中国資本の会社もありますが、自動車はほとんど外資で、アメリカ、ドイツ、日本の自動車メーカーは中国の工場で生産していて、これが中国のGDPに含まれています。
一方、中国はベンチャー企業もサポートしてきました。アリババはその中でも大成功した会社で中国版アマゾン、日本で言えば楽天に相当すると思います。
中国には大きな野望があり、それを隠してはいません。
中国は200年前の1820年には経済規模で世界第一の国であったというデータがあります。
しかし、1840-1842のアヘン戦争でイギリスに負けてから、中国経済は著しく収束し、イギリスに経済でも負けました。
一方、アメリカは200年前はできたばかりの国でしたが、イギリスを抜いてアメリカは世界No.1の経済規模の国となりました。
中国共産党は2021年に結党100年となるそうで、それまでにGDP総額の一人当たりのGDPを2010年から倍増する計画がありました。中国は200年前の状態に戻そうとしている訳です。
所得倍増計画と聞くとなんか池田勇人首相の目標みたいですね。
それを急激に実行するには中国には大きな外資が必要であった訳ですが、中国は外資を上手く取り込み、それが非常に上手くいったということであります。
コロナウイルスの蔓延がいつ終息するのかはまだわかりませんが、アメリカ、イギリス、ドイツ、日本の企業はこの中国の意図を知った上で、中国への投資、製造を中国一国に依存することで良いのかと真剣に考えるようになると思います。
私の付き合いのあるアメリカの会社も実際に中国を中心としたサプライチェーンの見直しを考えています。
よくよく考えますと、ハードの製造をコストの安い中国やメキシコにアウトソースして、より付加価値の高い分野にフォーカスしてゆくというのはもともと、アメリカを始めとする世界の大企業の戦略であった訳です。
中国市場そのものに魅力を感じた為、そのアウトソース先、投資先があまりにも中国に偏りすぎていたのでしょう。
そして中国は外資を下請けの製造業だけでなく、それにより得た利益をR&D投資にも使ってきました。
今から製造業を全て自国に戻すというのは現実的ではないですが、最適化を目指すとしたらそれを全て中国にすることは非常に大きなリクスがあります。
コロナウイルスの蔓延という歴史に残る大事件により、民主主義ではない、資本主義国家以上の資本主義の国、そしてGDP世界No.2の中国というモンスターを作り出してしまったのは実は自分自身かも知れないということを改めてアメリカも日本も認識する時ではないでしょうか。