2024年12月10日に日本の被団協(日本原水爆被害者団体協議会)はノルウェーのオスロで行われた受賞式でノーベル平和賞を受賞しました。日本がノーベル平和賞を受賞するのは1974年の佐藤栄作元首相以来、50年ぶりです。
この機会にノーベルが生み出したノーベル賞の原資はいくらで、現在どのように運営されているかについて調べてみました。
アルフレッド・ノーベルがノーベル賞の資金として遺した遺産は、当時の価値で約3100万スウェーデンクローナでした。この金額は今日の価値に換算すると、約2億スウェーデンクローナ(約20億円)です。ノーベル財団はこの遺産を元手に資産を運用してきました。
財団の最新の財務報告(2023年時点)によると、運用されている総資産額は約58億スウェーデンクローナ(約850億円)で、この資産運用によって、毎年授与される賞金や運営費がまかなわれています。
アルフレッド・ノーベルが遺した資産が2023年時点で58億スウェーデンクローナに増えたとすると、その資産運用の年平均成長率(年率リターン)を計算することができます。ノーベルが亡くなったのは1896年ですので、運用期間は127年となりますが、年平均で約4.21%の成長率で運用されてきたことになります。
2023年の総資産が58億スウェーデンクローナ(約850億円)で、これが今後も年平均4.21%の収益を生むとすると、年間収益額は2.44億スウェーデンクローナ(約36億円)となります。
一方、毎年ノーベル賞の各受賞者に授与される賞金は1100万スウェーデンクローナ(約1.6億円)で、ノーベル賞には平和賞、文学賞、物理学賞、化学賞、生理学賞、医学賞、経済学賞の7つの賞があり、同じ金額が授与されますから、総額1.6億円X7=11.2億円が毎年支払われていることになります。
整理するとノーベル賞財団は850億円の原資から毎年生み出される収益額36億円の11.2億円、約31%を支払っていることになります。
ノーベル賞財団は資産運用収益の中で、使い切らなかった69%の部分を再投資し、原資をさらに増やしています。この再投資こそが、財団が127年にわたって安定的に活動を続けられてきた理由の一つです。
そして、もうひとつの大きな理由はノーベル財団の資産運用収益に対する課税は、スウェーデン政府によって特別な取り扱いを受けています。
財団設立当初からノーベル賞は国際的な公益事業とみなされ、財団の運営や賞金に必要な収益については課税されない特例が適用されてきました。これは、ノーベル賞の目的である「人類の進歩に貢献する」という理念が高く評価されているからです。
ノーベル財団の資産運用方法についても調べてみました。実はノーベル財団は毎年報告書を公開しており、その中で投資方針や資産配分について説明しています。おおよその構成は次の通りです。
株式(約55~60%)
株式市場は財団の主要な収益源であり、米国株、ヨーロッパ株、アジア株など、地域を分散しています。特に米国株は重要な割合を占めていますが、国際分散が重視されています。
債券(約20~25%)
政府債券や企業債券など、安全性の高い資産に投資しています。低リスク資産としての役割を果たし、安定した収益をもたらします。
オルタナティブ投資(約15~20%)
これには不動産、プライベートエクイティ(未公開株式)、ヘッジファンドなどが含まれます。長期的なリターンを追求するために多様な資産クラスを組み込んでいます。
現金および短期投資(約5%)
流動性を確保するためにノーベル財団は現金や短期の市場性資産も保持しています。